AI通訳の進化により翻訳精度が向上?今後はどうなる?

AI通訳の進化により翻訳精度が向上?今後はどうなる?

言語が異なる相手とコミュニケーションを図る場合、以前は通訳士に訳してもらうのが一般的でした。しかし情報技術の発達した現代では、人工知能、すなわちAIを利用した通訳が少しずつ普及し、高精度かつニーズに答えた即座な通訳・翻訳が可能になっています。

予想より早く訪れつつあるAI時代の到来。これまで人力で成り立ってきた通訳・翻訳業界の未来はどうなるのでしょうか。今回の記事では、AI通訳の翻訳機能やその可能性について解説していきます。

AI通訳とは

テレビやネットのニュースでも取り上げられる「人工知能」。「人工知能=AI」という言葉を日常生活の中で耳にする機会が増えてきました。AIは人間の脳に似た学習機能を備え、今まで人間が行ってきたいくつかの仕事を自動で代行できるようになっています。

では、通訳・翻訳の世界ではAIはどのように活用されているのでしょうか。まずはAIが通訳をする仕組みや、従来の機械翻訳、自動翻訳と比較した場合の特徴を解説します。

「AI通訳」の概要

AI通訳とは、“人工知能によって稼働する通訳・翻訳プログラム”です。

記憶や学習を司る人間の脳神経(ニューロン)の働きを機械で再現した「ニューラルネットワーク」によって、機械自体が人間と同じように事象を学習するという仕組みになっています。さらにAI通訳は常に学習するため、何度も翻訳を繰り返すことで、より翻訳の精度が上がっていきます。

従来の機械・自動通訳との違い

従来の機械通訳では、開発者が定めた文法の規則(ルール)に沿って翻訳をする「ルールベース翻訳」という手法が使われていました。つまり、「機械が自動で翻訳する」といっても、人の手で一つ一つルールを定める必要があったということです。この通訳方法では、人間が定期的に情報をインプットし続けない限り、新しい言葉や概念の誕生に翻訳が追いつきません。

AI通訳は自動学習機能を獲得したことで、データベースの常態的な更新とほぼ無制限のデータ蓄積が可能になり、学習するたびに翻訳精度を上げられるようになりました。

AI通訳の進化

高度な最先端技術を備えたAI通訳ですが、ここ数年で急に開発されたわけではありません。その起源は、今から40年近くも前からありました。ここでは、AI通訳の過去と現在の状況、未来について見ていきましょう。

AI通訳のはじまり

1980年代以降、ビッグデータをもとにした「統計翻訳」が急速に普及しました。これは、学習した対訳データをもとに翻訳モデルを自動で作成する、典型的なAI技術です。対訳データの蓄積が増えれば増えるほど翻訳精度も上がり、対応言語の幅も広くなります。

現在の機械翻訳・自動翻訳はこの統計翻訳をベースに、ニューラルネットワークの自動学習を搭載しており、統計翻訳の発明は、AI通訳において非常に画期的だといえるでしょう。

AI通訳の開発状況

AI通訳やそれに関連する技術開発は急速に進み、近年では音声入力にも対応するようになりました。さらに機械翻訳として代表的な「Google翻訳」にもAIの自動学習が導入され、文脈に即した適切な翻訳が可能となり、従来の機械翻訳にありがちな「不自然な訳文が出力される」という問題を克服しつつあります。

AI通訳の将来

音声、文章双方の入力に対応した自動翻訳サービスが次々誕生していることからもわかるように、AI通訳の発展はとどまるところを知りません。AIは「ニューラルネットワーク」により学習するほど賢くなるので、将来的には不自然な訳出もほぼなくなり、十分実用に耐えるようになるでしょう。

通訳・翻訳業界の未来

AIによる通訳、翻訳は次第に実用レベルに近づき、将来的にはさまざまな場面での活躍も見込めます。しかし、AI通訳が今すぐに通訳・翻訳業界へ大きな影響を与えるわけではありません。ここではAI通訳の現状、従来型の人力での通訳・翻訳の利点について考えていきます。

従来の通訳や翻訳は必要なくなる?

AI通訳が目覚ましい発展を遂げる中、気がかりなのは従来型の人力での通訳・翻訳サービスの未来です。この業界はとくにAIに仕事を奪われやすいといわれていますが、果たして本当なのでしょうか。

AI通訳のコストが下がって普及すれば、通訳士の雇用や自分で外国語を学習するケースより資金的にも時間的にも効率がよくなり、通訳や語学学習に対する需要は低下すると考えられます。しかし、現状では高額な法人向けサービスが主であること、長文の完璧な訳出が難しいことからもわかるように、AI通訳は実用面、コスト面ともにまだまだ発展途上なのが現状です。

しばらくは、AIよりも通訳士・翻訳士による通訳サービスの需要が勝るでしょう。

通訳士・翻訳士にしかできない仕事

AIの自動学習能力が向上しているとはいえ、文脈把握能力は現時点では人間には及びません。比喩や間接的な表現が用いられた文学的な文章の翻訳は、AIにとって難しいといえます。また、人間がコミュニケーションにおいて優れているのは、相手の表情や声色といった非言語的な情報から相手の考えを推し量れる点です。

たとえば外国人観光客の「〇〇への行き方を教えてくれませんか?」という質問に対して、多くの方は相手が急いでいる様子なら簡潔に説明し、そうでなければ丁寧に分かりやすく説明する、といった対応を自然に行えるでしょう。今のところ、AIにはそのような柔軟な対応ができません。

まだまだ発展途上のAI通訳

ビッグデータを利用したAI通訳は40年近くにわたって発展を続けており、今後はより幅広い層への普及が予想されます。一方で、その実用性は発展途上であり、比喩や表情といった間接的な表現には、まだまだ対応できていないのが現状です。何十年も先の未来については分かりませんが、しばらくの間は、人間による通訳・翻訳サービスの需要も存在し続けるでしょう。