2018年の観光庁の調査で、訪日旅行者の訪日前に期待していたこととして、「温泉入浴」が30%近くに達しました。これは「日本食を食べる」「ショッピング」「自然・景勝地の観光」「繁華街を歩く」に次いで多く、いかに日本の風呂文化が注目されているかが分かります。「温泉入浴」は次回の日本訪問の際にしたいこととして42.7%、入浴に満足した人の割合も90%以上を記録するなど、全体的に満足度が高くなっています。
最近では昔ながらの公衆浴場である銭湯も観光客に人気のスポットとなっていますが、どのようなところが魅力なのでしょうか。

今回は、外国人観光客にとって銭湯が魅力的な理由と、その一方で抱えている問題点課題についても解説します。

参考:訪日外国人の消費動向

外国人客から銭湯が人気の理由

銭湯は店舗数が減っているため、日本人でも利用したことがない方もいるでしょう。特に若い世代は馴染みがないかもしれません。そんな銭湯にとって外国人観光客は新たな活路となっているようです。外国人客にとって銭湯の魅力とはどういったものなのでしょうか。

自国にはない習慣

日本と海外では、そもそもお風呂に対して求めているものが違うことがわかっています。海外では汚れを取り除いたり体を清潔にしたりすることが目的で、人に会う前の身だしなみとして起床後にお風呂に入るのが一般的なようです。一方日本では就寝前に入ることが多く、お風呂にリラックス効果を求めています。これは日本独自の習慣で、いつでも温かいお湯に浸かれる追い炊き機能も海外の方々にとっては珍しく映るのだそうです。

このようにお風呂に対する習慣が違いますが、一度公衆浴場に行くとハマってしまう外国人も多いのも事実。ただし、自国ではお風呂のお湯を大勢でシェアする習慣がないため、最初は混乱するそうです。海外では大勢で入浴する場合、水着を着用するパターンが多いので、裸を見られるのが恥ずかしいという気持ちもあります。それでも身体の大きい欧米人などは、内湯より広々とした銭湯を利用するなど、日本独自の習慣に親しんでいるようです。

タトゥーOKの銭湯もある

海外でタトゥーはファッションとして捉えられていますが、多くの温泉やスーパー銭湯で入墨・タトゥーのある人の入浴を禁じており、楽しみにしていたのに入れず残念だったという意見が寄せられています。

その点、町営の銭湯ではそのようなことがありません。それというのも、昔の日本は自宅に内湯がなく、銭湯を利用していた歴史があるからです。身体を清潔に保つことは「生存権」という憲法で認められている権利なので、公費を使用している銭湯では、入墨やタトゥーがあるからといって入浴を拒否することは基本的にありません。このような本来の銭湯の有り方が、外国人旅行者にとって利用しやすい環境を作っているといえます。

銭湯の魅力

最近は日帰り温泉やスーパー銭湯も増えています。温泉の種類がたくさんあったり、娯楽施設を併設していたりと店舗によって特色がありますが、もちろん銭湯にも独自の魅力があります。

地元の人と交流できる

銭湯は地域住民が集まるため、大切なコミュニケーションの場としての役割も果たしています。特に一人暮らしの高齢者はお風呂の掃除が大変という理由から銭湯を利用することが多く、これが介護予防やひきこもり防止につながっているそうです。
現在では外国人旅行者の訪問も増えているため、利用しやすいようにマニュアルを作成するなど、2020年の東京オリンピック開催に向けての準備が進められています。人情味あふれる銭湯ならではの交流が、インバウンドの新しいコト消費につながるかもしれません。

安価で利用できる

銭湯の入浴料金は都道府県ごとに決められていますが、温泉に比べるととても安価です。全国浴場組合のサイトで確認できる平成30年4月1日時点の料金では、最も高いのが神奈川県の470円、最も安いのが長崎県・宮崎県の350円となっています。
日帰り温泉でも1000円以下で入浴できる場合がありますが、銭湯の安さにはかないません。

また、一日中遊べるようなスーパー銭湯では3000円前後かかることもあるため、日本文化としての入浴を純粋に楽しみたい外国人観光客にとっては安価な銭湯が利用しやすいといえるでしょう。東京下町のホテルでは、銭湯体験と商店街の食べ歩きといった地元密着型のツアーも開催しています。有名観光地とはまた違った日本らしさを味わえる、新しい視点の観光といえそうですね。

参照:全国浴場組合

今後の課題

新たな人気スポットとして注目されている銭湯ですが、外国人客の訪問についてはまだまだ課題が残されています。2020年のオリンピック開催中は需要が高まると考えられるので、早めにこれらの課題をクリアする必要があるでしょう。

マナーの周知

一番の問題は「入浴マナー」の周知です。外国人客にとって銭湯の利用は馴染みのない習慣なため、マナーが周知されていないとトラブルの原因になります。実際、外国人男性がかけ湯をせずに湯船に入ろうとしたのを注意した客が殴られるという事件も起きました。

銭湯が多い大田区では、区内の銭湯に「指さし案内マニュアル」を配布して、外国人客との入浴習慣の違いを喚起しているそうです。また、英語だけでなく中国語や韓国語で注意事項を読み上げられるようにしたり、利用者向けの利用方法ポスターをイラストでわかりやすく作ったりするなど工夫をしていますが、さらなる周知が必要になります。

多言語対策

観光庁は羽田空港から近い大田区蒲田を「訪日外国人旅行者受入環境整備事業」の拠点としており、空港利用客を地元商店街に呼び込もうとさまざまな多言語対策を進めています。その一環として、現在では「外国人のための銭湯の入り方」というビデオも公開中です。

今後銭湯人気が高まると、他の地域でも多言語対策が必要となるでしょう。そのようなときはタブレット型通訳サービスの導入がおすすめです。タブレットによる遠隔操作で通訳者と会話できるので、訪日外国人も困ることがなく、銭湯側も安心して接客できます。また24時間対応も可能なため、営業時間外の応対が必要になった場合も焦らずに済むでしょう。このようなライブ通訳は今後ますます活用が期待されます。

参考:J-CASTニュース

銭湯の魅力を発信していこう

初めて銭湯を利用した外国人旅行者の中には、「日常的な感じがして良い」「リラックスできた」という感想を持つ人もいるようです。温泉に比べればまだまだ知名度は低いかもしれませんが、安価に日本独自の文化を楽しめる銭湯は今後ますます人気となるでしょう。今ある課題をクリアして、より多くの訪日外国人にその魅力を届けたいものですね。