外国人観光客の数が増え、日本の旅館でも、外国人客を呼び込むための施策や独自の取り組みが行われている現在。東京や京都といった代表的な観光地だけでなく、地方でもさまざまな対策が取られています。今回の記事では、外国人観光客からの旅館人気や、誘致に成功する旅館の特徴などについてご紹介していきます。

日本の「旅館」人気の現状

日本らしさを感じさせる「旅館」。日本を訪れる外国人観光客からは、どのように捉えられているのでしょうか。

「旅館」より「ホテル」の利用が多い

現状、宿泊施設として外国人客にもっとも選ばれている宿泊施設は「ホテル」です。中でもビジネスホテルとシティホテルの利用が、圧倒的に多くなっています。

観光庁の調査によると、平成29年は外国人宿泊者数約7,800万人のうち、70%を超える約5,600万人が、ビジネスホテルやシティホテルに宿泊しています。それに対して、旅館への宿泊は約800万人で、全体の10%程度です。

海外での認知度は少しずつ上がっている

旅館の認知度は、いまだ低いのが現状です。しかし、一部の旅館はSNSや口コミサイトで取り上げられ、注目を集めています。海外では「Ryokan」という名称が浸透してきており、少しずつ認知度が高まってきているといえるでしょう。

旅館を利用した外国人が多い県に格差

旅館を利用した人数には、都道府県によっても格差があります。たとえば、北海道では約740万人の宿泊者に対し、24%近い、約170万人が旅館を利用しています。スキーやスノーボード、豊かな自然などが人気の理由といえるかもしれません。そのほか、旅館を利用する割合が高い県に、富士山から近い山梨県や、温泉が有名な大分県などがあります。

参考:観光庁『平成29年1月~12月分(年の速報値)集計結果第4表(年計)』

旅館を訪れる外国人客が少ない理由

ホテルに比べ、旅館を利用する外国人客が少ない理由には、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、外国人客の旅館利用率が低い理由について見ていきましょう。

長期滞在しづらい

外国人旅行客は、国内の旅行客に比べて旅行先への滞在期間が長い傾向にあります。日本料理布団といった日本の文化は、一日、二日の宿泊なら楽しく体験できても、一週間以上の滞在となると不便さや過ごしづらさを感じる方もいるようです。

慣れない旅先でくつろぐため、ベッドで寝たいという方も多いでしょう。さらに、「毎日旅館で出される刺し身料理が口に合わない」「さまざまな日本食を自由に楽しみたい」などの理由から、旅館の食事が必要ないと考えている方も多い傾向にあります。

外国語対応が不十分

チェーン展開しているホテルや、観光地の人気ホテルなどは、英語や中国語、韓国語に対応できるスタッフを数人雇用しているケースが多くなっています。しかし、旅館では、多言語への対応が不十分な店舗が多いのが現状です。コミュニケーションが十分に取れない店舗では、外国人客は予約や宿泊の際に不便さを感じてしまいます。

外国人客に人気の旅館が行った施策とは?

ホテルと比較すると外国人客の宿泊数が少ない旅館ですが、一部の旅館は外国人客向けの施策をおこない、人気を集めています。ここでは、外国人客層を呼び込むために、日本の旅館がおこなった施策についてみていきましょう。

洗濯室の設置

観光地を訪れている外国人客の平均宿泊数は、5.8泊です。日本から遠い欧州や米国、カナダ、オーストラリアからの観光客の場合は、10泊以上の長期滞在が多くなっています。そんな外国人客にとって、旅行先で洗濯ができることは大切なポイントです。一部の旅館は、新たに洗濯室を設置することで、海外からのお客様にとても喜ばれたそうです。

参考:観光庁『訪日外国人の消費動向 平成29年年次報告書』

夕食を工夫する

観光庁の調査によると、訪日客が「日本に滞在中に行ったこと」として多かったのは、1位が「日本食を食べること」、2位が「ショッピング」、3位が「繁華街の街歩き」でした。毎日おいしい料理を提供するのもよいですが、外国人客は、短い滞在期間にさまざまな日本食を楽しみたい外国人客と考えている方も多くなっています。そのため、旅館でもあえて夕食を用意せず、周囲の飲食店を紹介したほうが喜ばれるケースもあるようです。

また、外国人客の中には、宗教的な問題で肉が食べられない方や、ベジタリアンビーガンの方もいます。「提供する料理の食材をしっかりと説明する」「ベジタリアン向けの食事を用意する」など、海外の文化や宗教に合わせた対応をおこなうとよいでしょう。

通訳サービスの導入

日本で言葉が通じない、十分なコミュニケーションがとれないなどの問題について、外国人客の不満が集まっています。どんなに魅力的な旅館でも、スタッフと言葉が通じなければ、敬遠されやすくなってしまうでしょう。

外国人客に人気の旅館では、通訳スタッフを雇用したり、電話通訳タブレット通訳などの通訳サービスを導入したりして、この問題の解決に取り組んでいます。

外国人客に選ばれる旅館に共通すること

ここまで、人気旅館が行った外国人客向けの施策についてご紹介してきました。では、外国人客に選ばれる旅館の共通点には、どのようなものがあるのでしょうか。

他にはない個性がある

外国人客に選ばれる旅館には、「日本らしい客室や眺めのいい露天風呂がある」、「歴史を感じる建物」、「女将さんの対応が親切」など、他の店舗にない個性があります。

近年、海外で日本の情報を集める際には、SNS個人ブログなどの口コミが参考にされるケースが多くなってきました。個性的で話題性のあるユニークな旅館は、ネット上で注目が集まりやすく、人気を得やすいといえるでしょう。

外国人客を徹底的に分析している

外国人客に選ばれるためには、外国人客についてのさまざまな情報に目を通し、傾向を徹底的に分析することが大切です。実際に旅館を訪れた外国人客の意見を取り入れたり、口コミサイトの書き込みを参考にしたりすることで、より外国人客に配慮した施策やサービスが考えられるでしょう。

海外のお客様が全員意見をくれるとは限らないため、スタッフ側から旅館の感想を聞いてみる、口コミサイトへの投稿をお願いするなど、積極的にコミュニケーションを図るといいかもしれません。

多言語での細かな対応や日本の日常生活を旅館の魅力に

インバウンド市場において、ホテル人気の影に隠れてしまっている旅館業界。近年は温泉の人気が高まってきているため、旅館にとってはチャンスといえるでしょう。今回ご紹介した内容を参考に、外国人客の獲得に向けた、新たな施策を考えてみてはいかがでしょうか。