京都や東京、大阪はもちろん、北陸や四国など、日本の各地で外国人観光客を目にするようになった現在。一時期はインバウンド旅行者の「爆買い」が話題になりましたが、最近では「体験型」の観光の人気が高まってきました。今回の記事では、体験型の観光の需要今後の展望などについて、ご紹介していきます。

外国人客の消費動向

訪日外国人、とくに中国からの観光客は、日本で家電や薬、衣類などを大量に購入する「爆買い」をするイメージを持つ方が多いかもしれませんが、近年は傾向が変化してきています。まずは外国人観光客の消費行動について見ていきましょう。

「爆買い」の収束

2014年頃、主に訪日中国人観光客が日本のドラッグストアや家電量販店、デパートなどで大量に商品を買い込む様子が「爆買い」としてメディアで度々紹介されました。そこまで日本製品が購入された要因は主に、「元高・円安」「日本製品の品質や性能への信頼」「中国の税制(中国で日本製品を買うより、日本で買って持ち帰った方が安い)」の3つです。

このような理由から爆買いをする訪日中国人観光客が多くなっていたのですが、最近では落ち着いてきました。その背景には、中国政府が、2016年4月に海外購入製品に対しての関税を引き上げたことが挙げられるでしょう。

今後は体験型の観光が求められる

観光庁の調査では、外国人観光客が2度目以降の訪日時に行いたいこととして、「四季の体感(花見・紅葉・雪など)」や、「日本の歴史・伝統文化体験」「日本の日常生活体験」などが挙がりました。このことから、複数回日本を訪れる「リピーター」は、2度目以降の訪日旅行時は「体験系」の観光に興味を持っていることが分かります。

さらに、体験型の観光は、一度の訪日ですべて体験し尽くすのが難しいため、「次の訪日旅行では◯◯をしたい」と次の訪日を促す効果も期待できるでしょう。

参考資料:観光庁『訪日外国人の消費動向』

需要が高まる「コト消費」

ご紹介したような消費動向の変化は、経済用語で「モノ消費からコト消費へと転換している」、といわれています。ここではコト消費とは何か、どんな種類があるのか、詳しく見ていきましょう。

コト消費の概要

爆買いのようにモノを購入する消費行動を「モノ消費」、サービスなどに価値を見出す消費行動を「コト消費」といいます。2015年までは「モノ消費」の需要が高い傾向にありましたが、最近では「コト消費」が増えてきました。訪日外国人観光客の楽しみ方は、「爆買い」から「コト消費」へ移り変わってきたといえるでしょう。

コト消費の種類

コト消費はモノではなく、サービスや体験に対して価値を見出し、対価が支払われます。コト消費の中には、以下のような種類があります。

  • アクティビティ

  • 観光の中でも最も人気が高いのはアクティビティの部類でしょう。ホテルや旅館に泊まり、その土地ならではの食事をしたり、温泉やウインタースポーツを楽しんだりすることがアクティビティです。

  • 文化体験

  • 日本文化を体験する「コト消費」です。和服や書道、陶芸などの伝統文化の体験から、コスプレ、アニメなどのポップカルチャー体験までさまざまなものが含まれます。アニメの舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」も、外国人観光客に人気があります。

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    「コト消費」観光の例

    コト消費が増えてきた今、日本各地では国、地域、企業に至るまで「コト消費」観光を推し進めています。実際にはどのような成功例があり、今後はどのようなものに目を向ければいいのでしょうか。

    さまざまな「コト消費」の例

    コト消費観光の成功例には、以下のようなものがあります。

  • 蕎麦打ち体験

  • 日本各地で蕎麦打ち体験ができる施設が増えました。ツアーを組むとすぐに満席になり、欧米、アジア圏問わず人気の体験型観光の一つです。ある企業では、インバウンド需要を見込んで「蕎麦打ち体験施設」をオープンさせ、集客に成功しています。

  • 酒蔵見学

  • 初めて日本を訪れる外国人観光客に最も人気なのは、今も昔も変わらず「お寿司」です。他にラーメン、天ぷらなども人気ですが、日本の「お酒」も人気があります。日本酒の製造工程に興味をもつ外国人客も多いため、日本酒の酒蔵見学ツアーは参加率が高く、地方の酒蔵を目当てに旅行する方も増えています。

  • 着物レンタル

  • 京都の観光人気は根強く、街中を着物で歩きたい、という外国人客が多くなっています。清水寺をはじめとする各観光場所では着物レンタルを行なっており、1日着物体験をできるプランが人気です。

    今後の観光業を考える「ニューツーリズム」とは

    ニューツーリズムとは、直訳すると「新しい観光業」です。これまでの観光地ではなく、各地域で考案した新しい観光地作りを行うことで、観光客のリピーターを増やす狙いがあります。海外の方にとって銀座の歩行者天国や渋谷のスクランブル交差点などの光景は珍しく、観光スポットとして人気を集めています。それと同じように、地域に眠っている資源を活用し、体験型・交流型観光をうち出そうというものです。

    これからのインバウンド市場では「体験型」に注目する

    訪日外国人に人気の商品を揃えたり、免税店を増やしたりするだけでは、現在の旅行客のニーズに対応しきれません。重要なのは「コト消費」です。国や旅行会社も、「日本でしか体験できないこと」を中心に、地方でのニューツーリズムを考案しています。

    日本企業や地域の「体験してほしいこと」と、外国人客が「体験したいこと」が異なる場合もあります。外国人客のニーズをしっかりと把握し、それに合ったサービスを提供できれば、より深く日本の魅力を伝えることができるでしょう。