近年、海外から観光地としても注目を浴びる日本。国土交通省観光庁の調査によると、2017年の訪日外国人客数は過去最高の2,869万人です。インバウンドによる観光消費は、日本経済を支える重要な収入源にまで成長してきました。

今回の記事では、インバウンドによる経済効果の実態や、日本の企業や地域が取り組むべき施策をご紹介します。

経済効果が大きい業界

観光庁の調べによると、2017年、訪日外国人客の日本での支出額が大きかったのは「買い物」(37.15%)、次いで宿泊費(28.2%)、飲食費(20.1%)です。まずは、それぞれの項目に関連する業界の現状について、詳しくご紹介していきます。

参考:観光庁『訪日外国人消費動向調査』

■店舗・小売業

インバウンドが最も多くお金を使っているのは「買い物」です。中でも化粧品、医薬品、日用品といった消耗品の売り上げが好調で、ドラッグストア小売店での消費額が急増してきました。これは、従来からの日本製品の人気に加えて、2014年に改定された消費税の免税制度の導入によるものとされています。

今後、買い物による経済効果をさらに引き上げるには、各店舗で扱う商品の改善や充実国籍別需要傾向の分析や対応などが必要となっていくでしょう。

■宿泊施設

訪日客の中には、日本に長期滞在する方が多くなっています。国内の旅行需要が低下しつつある現在、訪日客は宿泊施設にとって重要なターゲットになるといえるでしょう。

外国人客の利用が多いのはホテルですが、旅館への宿泊に興味を持つ方もいるため、宿泊業界は更なる設備投資が迫られるでしょう。さらに、最近は民家を利用する「民泊」も注目されています。

■飲食店

寿司や天ぷら、ラーメンなどの日本食は、海外でも広く知られています。2013年には和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、ますます注目が集まるようになりました。このような背景から、日本食が目当てで来日する外国人客も多くなっています。

外国人客が集まる観光地では、メニューを複数の言語に翻訳したり、外国人好みの味付けを工夫したり、ベジタリアンやイスラム教徒の方に配慮したりといった対策をとるレストランが増えています。

出身国別の経済効果

訪日客の消費額を国籍や地域別にみると、中国が1兆6.946億円(全体の38.4%)とダントツで、台湾が5,744億円(13%)、韓国が5,126億円(11.6%)、香港が3,415億円(7.7%)と続き、東アジアの4カ国が全体の消費額の71%を占めています。

ここでは、訪日外国人の国籍別の経済効果について詳しく見ていきましょう。

参考:観光庁『訪日外国人消費動向調査』

■訪日中国人観光客のインバウンド

中国人観光客といえば、流行語大賞にも選ばれた「爆買い」のイメージを持つ方も多いかもしれません。最近では、ネット通販による輸入商品の普及の影響もあり、「爆買い」ブームが落ち着いてきました。それでも、中国からの訪日観光客は変わらず存在感を示しています。

また、中国人観光客の方は団体旅行をするケースが多く、2月の旧正月(春節)や10月の大型連休に観光客が殺到する傾向にあります。

■東南アジア諸国のインバウンド

好調な経済成長を受けて、近年はタイシンガポールマレーシアカンボジアのような東南アジア諸国からの観光客増加も目立ってきました。とくにタイは、2013年にビザ発給用件が緩和されたことで訪問客が急増し、2017年は米国に続いて訪問数6位となっています。

東南アジアからの観光客には、新日家やリピーターの方が多いのが特徴です。中国と比べると一人当たりの買い物消費は少ないものの、インバウンド需要が高く人口の多いインドネシアも、今後注目されそうです。

■欧米諸国のインバウンド

近隣のアジア各国と比較すると、欧米諸国からの訪問客数は少なくなっています。しかし、全体的に訪日客数は増加傾向にあるため、2020年の東京オリンピックに向け、今後も少しずつ拡大していくと予想できます。

オーストラリアを加えた欧米豪諸国からのインバウンド層は、滞在日数が長く、より「コト消費」を好む点が特徴的です。この層を取り込むには、長い滞在期間を最大限に楽しんでもらえるよう、施策を整える必要があるでしょう。

これから考えられる施策

2020年の東京オリンピックを控え、今後ますますインバウンド市場の拡大に期待がかかる現在。より一層の経済効果を引き出すには、どのような施策を考えていけばよいのでしょうか。

■多言語通訳サービスの導入

訪日外国人客が日本旅行時に困ったこととして、「コミュニケーション」の問題が挙げられます。インバウンドがさまざまな国から訪れる現在、英語以外にも、中国語や韓国語など多言語でのサービスや対応が必要となっていくでしょう。

多言語化に迅速な対応をするには、複数言語に対応可能な通訳士を雇用する、タブレット型通訳サービスや電話通訳といった「通訳サービス」を導入するなどの施策が効果的です。

参考:観光庁『外国人旅行者に対するアンケート』

■コト消費の充実

外国人旅行客数が増加の一途をたどる中、繰り返し日本を訪れるリピーターも増加してきました。こうしたリピーターは、関心が以前の「モノ消費」から「コト消費」に移る傾向にあり、日本ならではの経験や体験を求めています。

外国人のコト消費のニーズは出身国や地域によって異なるので、伝統的な日本文化ポップカルチャーなど、地域の特性を生かした多様なサービスを提供していく必要があるでしょう。

■日本の地方の魅力を発信する

訪日外国人数は増え続けていますが、東京・京都・大阪などの、知名度の高い観光地に旅行者が集中する傾向にあります。その他の地方の観光地に関しては、魅力的な観光資源があるにも関わらず、認知度が低いのが現状です。

訪日旅行のリピーターは増えていても、地方への広がりは限定的です。外国人客の少ない地域や企業は、「コト消費」の需要増大を利用して、地方の個性や魅力を発信し、積極的に宣伝をしていきましょう。

今後も成長が期待されるインバウンド市場

急激に増え続ける訪日外国人観光客とその経済効果について、業界別、国や地域ごとの特徴や傾向を中心に解説してきました。

インバウンド市場は今度も成長が期待されますが、日本の企業でインバウンド層を呼び込むには、明確な施策や戦略が必要不可欠です。今回ご紹介した内容を参考に、各企業にとって最適な施策を考えてみてはいかがでしょうか?