2020年に開催されるスポーツの祭典「東京オリンピック」まで、いよいよあと少しとなりました。プレゼンの際に招致委員会による「おもてなし」という言葉が話題になりましたが、実際にオリンピック開催中にそのおもてなしができるかどうかは、あと数年にかかっているといえるでしょう。
日本での開催が迫ったオリンピック・パラリンピックですが、そこで提供できる「おもてなし」にはどんなものがあるのでしょうか。

今回は、東京オリンピックに向けたおもてなしについて、その内容と対策などを解説します。

「おもてなし」とは?

普段なに気なく聞いている「おもてなし」という言葉ですが、そもそもどのような意味をもっているのでしょうか。実は、この言葉には深い意味が込められているのです。

サービスとは違う意味を持つ

「おもてなし」は、ただのサービスとは異なる意味を持っています。例えば、レストランで出されるおしぼりや旅館での布団の準備は「サービス」ですが、その際に「ゆっくりとお寛ぎください」といった言葉をかけることは「おもてなし」にあたります。

海外では個々の接客に対してチップを渡しますが、日本にはこのような習慣がありません。日本のサービスの高さや親切心は海外でも有名で、たびたび話題になりますよね。チップという対価がなくても丁寧な接客ができるのは、正に「おもてなし」の精神がなせる業でしょう。「おもてなし」とは、ただ提供するだけのサービスとは違い、客側の期待を上回る気遣いといえそうです。

「もてなす」「裏表なし」という意味を持つ

「おもてなし」は「もてなす」の丁寧語にあたります。「もてなす」の語源は「ものを持って成し遂げる」ですが、「おもてなし」は「表裏なし」と言い換えることができ、そこには表裏のない心でお客様を迎えるという意味が込められています。見返りを求めず相手に尽くすという、古来より続く日本らしい精神が伺えますね。

東京オリンピックに向けたおもてなし

日本独自の「おもてなし」は、東京オリンピックでどのように活かすことができるでしょうか。現在では都市ボランティアの募集も始まり、おもてなし精神を具現化する構想がさまざまなところで練られています。

飲食店

オリンピック開催中は多くの外国人客の訪問が見込まれますが、その際に宿泊と並んで高い需要を持つのが「食事」でしょう。
海外では小麦粉を制限する「グルテンフリー」や動物製品を摂取しない絶対菜食主義の「ヴィーガン」も多く、これらに対応した食事提供も一般的です。

また、イスラム教徒の人たちは豚肉やアルコールの摂取を避ける必要があり、鶏肉や牛肉についても屠殺方法が決められていたり血抜きが必要だったりと細かい決まりがあります。これらに対応できないと、該当する訪日客は食べるものがなく困ってしまうことにもなりかねないので、アレルギーや宗教に合わせた食事提供が必要となるでしょう。

宿泊業

宿泊については、十分なホテル数を確保したり、円滑な接客をしたりするのもおもてなしの一環といえます。近年では「Airbnb」などのサービスも登場し、民泊も利用しやすくなっています。当初は違法民泊が問題になることもありましたが、現在では「民泊新法(住宅宿泊事業法)」も成立し今後の拡大が見込まれています。一般の民家に宿泊する民泊では、個人間だからこそのアットホームなやりとりが人気で、これも一つのおもてなしの形といえるかもしれません。

2017年10月には無人の宿泊施設「Commune(コミューン)」も登場し、サービス開始1カ月で稼働率が80%を超えるなど盛況です。タブレットやAIを活用することで業務が自動化された新世代のこの宿泊施設は、24時間チャットでコミュニケーションが取れるため安心して利用できます。

参照:東京オリンピックに向けた宿泊問題解決の鍵となるか?AIを活用した無人型宿泊施設「Commune(コミューン)」

電車やバス

競技会場を行き来する場合は公共交通機関を利用することになりますが、東京の路線図はとても複雑なため、運賃や乗換も分かりづらいのが現状です。これは外国人観光客に限らず、日本人でも困った経験がある方も多いでしょう。そのため、安全に乗れると外国人客から人気の高いタクシーを活用や、大型直通バスの導入が期待されています。

また、おもてなしとして交通機関での多言語表記も必要でしょう。東京は国際都市なので、既にいくつかの言語で案内表示されていますが、今後はさらなる追加説明が求められるかもしれません。各言語を話せる人材が欲しくてもなかなか対応が難しいため、現在はボランティアと連携するなどいろいろな対策が練られています。

今後できるおもてなし対策

オリンピック開催まであとわずかですが、現状ではまだまだ対応すべきことが山積みのようです。日本独自の「おもてなし」を体験してもらうためにも、早めにこれらを解決する必要があるでしょう。

多言語対策

無人型宿泊施設のようにAIを活用できる場合を除くと、多くのシーンで多言語対応が必要となってきます。これを素早く解決できるのが「タブレット型通訳サービス」の導入です。このサービスは、タブレットを使用して訪日客と翻訳者がリアルタイムに会話できます。その場に外国語を話せるスタッフがいなくても、この通訳サービスを使用することで、店員側もお客様側も安心して対応することが可能です。人員を探す手間も省けるうえ、24時間対応可能なので、このようなライブ通訳を導入するメリットは大きいでしょう。

多言語表記

小売店や飲食店のメニューに関しては、多言語表記をすると外国人観光客に理解してもらいやすくなるでしょう。その際に丁寧な説明を付け加えておけば、より良い「おもてなし」にもつながります。特に飲食店では、前述の「アレルギーや宗教に合わせた食事の提供」が求められるので、あらかじめ、「グルテンフリー」「ヴィーガン対応」「無農薬野菜使用」といった特徴を各言語で明記しておくと、アピールポイントにもなりそうです。

免税店への登録

インバウンド消費は大きな経済効果につながっていますが、その一端を担っているのが「買い物」です。自分用のものやお土産など買い物の種類はさまざまですが、消費をさらに促すためには今より多くの免税店が必要でしょう。政府は2020年までに免税店を現在の2倍にあたる10000店規模にしようと計画しています。

免税店の登録には納税地の税務署の許可が必要となり、所在地は外国人旅行者など非居住者の利用度が高い場所と決められています。販売できるものはさまざまですが、5000円~50万円までの範囲で指定された包装が必要です。これらの条件を満たさなければいけませんが、免税店が増えればそれだけ外国人観光客の訪問も増え、経済効果も上昇することでしょう。

参考:東京オリンピックまでに倍増する!?「免税店」ってどんな仕組みなの?(税理士ドットコム)

「おもてなし」の実現に向けて

2020年の東京オリンピックでは、初めて日本を訪問する外国人も増えるはずです。「おもてなし」を体験して気分よく日本で過ごしてもらうためにも、さまざまなインバウンド対応が必要となるでしょう。少しでも早く課題を解決し、滞りなくオリンピック開幕が迎えられるようにしたいですね。