今、医療業界が注目している通訳サービスとは?

今医療業界が注目する通訳サービスとは

ここ数年、来訪外国人数が増加しつづけている日本。その影響を受け、国内の医療現場でも、少しずつ外国人患者数が増えてきました。外国人患者の国籍はさまざまで、英語だけでは対応しきれないケースもあるため、最近では”医療現場の多言語化”が求められています。

今回の記事では、増加する外国人患者に対して、医療機関が行える対策についてご紹介していきます。

外国人患者の対応が困難な状況

日本を訪れる外国人数の増加により、増えてきている外国人患者。まずはその現状について、詳しく解説していきます。

外国人患者を受け入れた病院は全体の“74%”

平成28年の厚生労働省の調査では、在留外国人数が約230万人以上にのぼり、日本の総人口の約2%を在日外国人が占めていることが明らかになりました。同年の来訪外国人は約2400万人で、過去最高記録を更新しており、日本のグローバル化は今後も進んでいくと考えられます。

これらのことから、日本国内で医療機関を利用する外国人は増加していくと予想できます。

実際に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2012年に発表した「我が国における外国人医療の現状について」によると、“日本国内で1年間の間に1人以上の外国人を受け入れた病院”の割合は74.6%。すでに全国の約7割以上の病院が、外国人の診断・治療を経験しているという結果が出ています。

外国人患者の治療が困難なケースも

外国人患者の中には日本とは異なる文化宗教感をもつ方が多いため、診断結果や治療方針の説明などを、言葉でしっかりと説明して理解してもらうことが重要です。

しかし、日本の医療機関には英語以外の外国語に対応できるスタッフが少ないのが現状。中国・韓国をはじめとしたアジア諸国出身の外国人患者や、英語圏以外の外国人に対しては、満足に対応できていません。

医療通訳とは

医療通訳とは、医療従事者と外国人患者の間に通訳者が入り、意思疎通のサポートを行うことです。

世界各国の医療従事者が遵守している「患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言」には、“患者は情報を文化・言語に適した方法で与えられなければならず、自身の状態に関わる決定は自由に行えるようにしなければならない”といった趣旨の内容が記載されています。

そのため、医療従事者と患者の間に立ち、診断結果や治療についての説明を訳す「医療通訳」は、外国人患者が増加する今後の医療現場において、重要になっていくと予想できます。

参考:厚生労働省 医療通訳に関する資料

医療通訳の課題とは?

今後の医療現場で需要が高まると予想される医療通訳。では、医療通訳が現在抱えている問題には、どのようなものがあるのでしょうか?

医療通訳士の人数が不足している

医療現場を専門として働く「医療通訳士」はごく少数で、病院数に対しての人数が足りていません。医療通訳士がいない病院では、患者の知人や家族、ボランティアの通訳者などが通訳をおこなうケースもありますが、医療通訳の専門知識を持たない方が通訳を行うと、患者に間違った情報が伝わってしまう可能性があります。

人材が育つまで時間がかかる

医療通訳士になるには、

  • 1、養成スクールや専門学校に通って基礎を学ぶ
  • 2、一般通訳者として働いて経験を積む
  • 3、医療通訳専門技能認定試験などを受験して資格を取得する
  • という流れが一般的で、通常の通訳士になるよりも時間がかかります。

    経験の豊富さが求められる

    医療現場ではデリケートな話題も多く、患者への診察結果の伝え方には細心の注意をはらう必要があるほか、時には治療をしている横で通訳を行うこともあります。そのような場面でも、落ち着いて正確な通訳ができるようになるには、医療通訳に関する確かな知識と、現場での経験の豊富さが求められるでしょう。

    医療通訳士を配属する際の壁

    ご紹介してきたように、医療現場における通訳の必要性は高まっています。ですが、実際に医療通訳士を雇用している現場は多くありません。

    その理由は、病院側が医療通訳士を雇用する際の”壁”にあります。

    医療通訳は相場が高い

    医療通訳士には、専門知識や患者への配慮だけではなく、限られた時間の中で、素早く正確な通訳を行う能力も求められます。

    そのため、雇用する医療通訳士は、必然的に経験豊富でスキルの高いベテラン通訳士に限られ、同時に依頼時にかかる費用は高額です。雇用のコストが高いことは、医療通訳士の配属を悩ませる大きな壁になっているといえるでしょう。

    多言語対応が難しい

    現在の日本には、ヨーロッパだけではなく、アジア圏やその他諸外国から多くの外国人が訪れています。その中には英語が話せない外国人も多いため、多言語への対応が求められていますが、多言語を話せる医療通訳士はなかなかいません。もし複数言語に対応できる通訳士を見つけても、雇用にはかなりのコストがかかるでしょう。

    多言語に対応できるツールがある

    言葉の壁が人命に関わる可能性のある医療機関で、最近導入され始めている通訳手段が、「タブレット型通訳サービス」です。タブレットを通してオペレーターに通訳をしてもらうこのサービスには、医療現場にとって多くのメリットがあります。

    多言語に対応している

    タブレット型通訳サービスでは、多くの通訳オペレーターがコールセンターで待機しており、英語だけではなく、多言語への対応が可能です。ひとつのタブレット型通訳を導入するだけで、中国語や韓国語、タイ語など、幅広い言語での円滑なコミュニケーションが実現するでしょう。

    コストが抑えられる

    多言語に対応するために複数人の通訳者を雇ったり、スキルの高い通訳者に依頼したりする必要がなくなり、コストを削減できるのもメリットのひとつ。

    契約内容によっては月額定額制で通訳サービスを受けられる場合もあるので、医療通訳士の常駐が必要な病院でも導入しやすいのではないでしょうか。

    24時間対応できる

    タブレット型通訳サービスでは、24時間いつでも通訳のサービスが受けられます。
    時間によって対応言語が限られる場合もありますが、必要になる頻度が高い英語や中国語、韓国語などは24時間通訳オペレーターが待機しているため、夜間や早朝でも対応が可能です。

    すでにタブレット型通訳サービスを導入している病院の中には、「昼は医療通訳士に通訳を任せ、夜間・早朝などの救急の患者に対してはこのサービスで対応している」というところもあります。いつでも多言語に対応できることは、昼夜問わず患者が訪れる医療機関にとって、大きなメリットといえるでしょう。

    対面式なので不安感が少ない

    タブレット型通訳サービスには、対面式のテレビ電話タイプが多くなっています。お互いの顔が確認でき、通訳者がこちらの表情を読み取りながら通訳を行えるので、このサービスには患者の不安感を和らげる効果があります。

    今後の医療現場にはグローバル化が求められる

    在留外国人や外国人観光客が増えている現在。今後は外国人患者数も増え、医療現場ではより多言語への対応が求められていくでしょう。

    多言語化の方法を一つに絞る必要はありません。”医療通訳士の雇用とタブレット型通訳サービスの導入を両立させる”、”タブレット型通訳を導入しながら医療スタッフにも英語教育を施す”など、いくつかの方法を取り入れることが、理想的な多言語化の形といえるのではないでしょうか。