訪日外国人が増加し、今後も観光立国としての活動が推進されるであろう日本。今、観光地において「外国人観光客への接客問題」が急浮上しています。

日本に訪れる外国人観光客からの収入を逃さず、日本経済を支える基盤とするためには、観光地で働く人々が円滑に接客を行えるかどうかが非常に重要となっています。

そこで、今回は訪日外国人増加の理由やそれによる問題、そして観光地の企業が取り入れるべき通訳サービスをご紹介したいと思います。

観光地の訪日外国人増加について

近年、海外から観光目的で日本に訪れる訪日外国人が増加の一途を辿っていることをご存知でしょうか。
日本政府観光局の調べによると、2015年の訪日外国人は約1970万人を超え、前年比47%増という驚異的な数値が発表されました。

細かな数値を分析すると、訪日外国人の大半が観光が目的で、その8割は中国や韓国などのアジア諸国からの旅行客となっています。

この背景には、世界的な経済成長が密接な関わりを持っています。
世界でも有数の人口数を誇る中国を始めとしたアジア諸国の経済が成長すると、周辺で富裕層が増加し、海外旅行に出かける人数の比率の増加します。

それに加えて、日本では2003年ごろから、観光立国としての日本を世界に周知させるキャンペーンを積極的に行ってきました。
世界からの日本への関心が高まることで、海外旅行において行き先を日本に設定する人が増えているのも、訪日外国人増加の要因の一つと言えるでしょう。

今後も増え続けるのか

日本政府は2016年に行われた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で来訪外国人の目標数を2020年に3000万人、2030年には6000万人にすると発表しました。
こういった目標を掲げ、日本を世界へアピールする働きかけや観光立国としての周知徹底を続けていけば、今後も日本への来訪外国人は増加して行くと予想されます。

また、現在日本に訪れている外国人の約半数はリピーターだという統計が出ています。
つまり一度日本に訪れた外国人の方は日本になんらかの魅力を感じ、再び日本に訪れる可能性が高いということ。このリピート率の多さもまた、来訪外国人の数を増やす要因になっていくのではないでしょうか。

観光地で困っていること

来訪外国人が増え観光収入が増加することは日本経済にとっても非常に喜ばしいことです。しかし、その一方で観光地で実際に外国人と関わる仕事に就く人々には、新たな問題が持ち上がっています。

・外国語で対応できるスタッフが少ない

観光地を悩ませている大きな問題の一つが、来訪外国人の増加に対して「英語で接客できるスタッフ」の数が足りていないということ。
今後、日本に訪れる外国人の数が増えれば増えるほど、日本語ではなく英語での接客対応を求められる場面も多くなっていくでしょう。
とくに宿泊施設や商業施設、飲食店などでは一度に複数人の外国人観光客に対して接客や案内を行わなければならない場面も出てくるかもしれません。

そういった時、その店舗に英語で十分な接客ができるスタッフがわずかでは一部のスタッフに負担が偏ってしまうことになります。それどころか、中には店の中に英語で接客できるスタッフがいない、という店舗も存在しているかもしれません。

そういった状況が続けば、「観光収入を得る」というチャンスを逃すだけではなく、日本に訪れた外国人観光客の方々にも不便な思いをさせてしまうことになります。

実際に、2016年に総務省・観光庁が行った「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」によると、来訪外国人が日本で困ったことの2位に「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない(英語が通じない等)」という意見が挙げられています。

・英語以外の言語での対応ができない

日本に訪れてコミュニケーションが取れないと思う外国人観光客は英語圏の方々だけではありません。
前述した通り、来訪外国人は約8割が中国・韓国などのアジア諸島という統計が出ています。
訪日外国人の中には「自国語以外の英語や日本語はほとんど喋れない」という方も多いでしょう。

日本の観光地スタッフで「中国語や韓国語で相手の聞きたいことについて答えられる」人の割合は、「英語が片言でも話せる」人の割合よりさらに少ないというのが現状です。
英語以外の言語を使う訪日外国人に対しては、語学力の不足がコミュニケーションの大きな弊害となってしまいます。

・他国言語を身につける時間が不足している

こういった、対応言語に対する問題について、各観光地でも徐々に対策が取られるようになってきました。
街を歩くと、英語と日本語、中国語などでメニューが併記されている看板や、指差しで会話ができるパネルを用意している飲食店や小売店も見かけることがあるのではないでしょうか。

しかし、実際に店員に対して簡単な英語やその他の言語の研修を行い、外国語での接客を身につけてもらう時間というのは中々確保できないもの。
例え勉強してある程度の知識を身につけたとしても、実際に外国人相手に臆さず会話できるようになるには、ある程度の経験と慣れが必要です。

年々増加する外国人客に対して、言語習得の時間が不足しているのも観光地で働く人々が抱えている問題の一つと言えるでしょう。

通訳ガイド制度とは

観光地が来訪外国人増加に対して抱える問題を受けて、日本では2017年5月に「通訳ガイド制度」の改正が行われました。

今まで、通訳ガイドを有償で行うには「通訳案内士」と呼ばれる国家資格を取得しなければなりませんでした。さらにこの国家資格は試験の難易度が非常に高く、合格者が少ないという状況で通訳ガイド不足の原因ともなっていたのです。

2017年5月に改正された「改正通訳案内士法」では、資格を持たない人でも有償で通訳ガイドを行えるように規制が緩和されました。
これによって、今まで英語や他国言語を得意としていたけれど、国家資格を持っていないためにガイドとして働けなくなった人々でも、外国人観光客に対して通訳ガイドを行えるようになりました。

民間企業で増加中のライブ通訳

法改正によって今後、通訳ガイドの人数が増えれば民間企業でもガイドの雇用が可能となるでしょう。
しかし、そこには人件費といった経費の問題も発生します。

たとえば、観光地にあるすべての支店に通訳ガイドを雇うとしたら、今までよりも多い費用がかかることになるのは当然。通訳ガイドを雇うために人件費を削減し、店舗を運営するスタッフが不足してしまうことになると本末転倒です。

民間企業ではタブレットを使用したライブ通訳が主流に?

そんな中、民間企業で導入が増加している通訳サービスが「タブレット型のライブ通訳」というサービスです。

タブレット型のライブ通訳とは、通訳会社と契約し専用のタブレットを設置することで、遠隔でのライブ通訳を可能とした画期的なシステムです。

基本的な流れは、通訳が必要な時にだけタブレットから通信を行い、専用の通信オペレーターと接続しテレビ電話のようにお互いの顔をうつしながら通訳を行うというもの。
これを利用すれば各店舗に通訳スタッフを常駐しなくてもよく、少ない経費で言語の問題を改善できるようになります。

さらに、ライブ通訳は従来の自動翻訳機などとは違い実際に接続先にいる通訳オペレーターとリアルタイムで会話をして進める通訳方法です。
プロの通訳者が外国人の言葉を訳したり、スタッフの伝えたいことを通訳してくれるので「おもてなし」という日本の文化を保ちながら円滑なコミュニケーションが行えるようになるでしょう。